「30年に一度の衝撃」となった、ハミルトンのフェラーリ移籍

25年にタッグを組む、ルクレール(左)とハミルトン

『そんなことは絶対ありえない』 という言葉は、F1では通用しない——。これが私の持論である。

当時の社長が「再参戦はない」と言い切って撤退したホンダのF1活動が、わずか1年半であっさり再参戦へ覆り、「絶対にF1の人気獲得は無理」と言われた米国で空前のF1ブームに沸いている。F1復帰はできない、と言われたアロンソも42歳で元気にサーキットを駆けている。

2023-24年のシーズンオフはドライバーの移籍、F1離脱、新人採用が1人もない史上初のシーズンだったが、その裏では25年に向けて衝撃の人事異動が進んでいた。

自分のXの投稿をベースにまとめたシーズンオフの備忘録を複数回で整理したい。

ハミルトン、フェラーリへの電撃移籍(2月1日)

10年に一度。いや、30年に一度の衝撃的な移籍が発表された。ハミルトンがメルセデスを去り、25年にフェラーリ入りするというのだ。

フェラーリへの超大型移籍、という意味では96年のシューマッハ加入以来の衝撃だろう。

25年シーズン前にハミルトンは40歳となる。彼はメルセデスで骨をうずめるとされており、一時は引退説も取りざたされた。しかし、そんなウワサはどこ吹く風で、新たな挑戦に身を投げ出す姿は恐れ入る。

長年エンジニアとしてタッグを組んだピーター・ボニントンらの同時移籍もささやかれる。すでにハミルトンの25年に向けたチーム作りが始まっているのだ。

移籍後のハミルトンはルクレールと組む。

ルクレールについては以前書いたが、ドライバーの経験値を積む間もなくフェラーリのエースに就いた感がある。速さはともかく、チームのけん引力が未熟だ。彼にとっては今度こそ、最強王者から学ぶチャンスだ。

チーム内での立ち振る舞い、タイヤの使い方、プレッシャーへの対処など、ありとあらゆる点を盗んでほしい。特に、フェラーリという魔物が棲む組織で、ハミルトンがどんな身の処し方をするかは参考となるはずだ。

(ハミルトンすら潰される可能性もあるが。。。)

盗むだけではなく、速さでハミルトンを叩きつぶす必要があるのは言うまでもない。

Xで「ハミルトンのフェラーリ移籍についての入試問題風の質問」に寄せられた秀逸な回答

なお、F1ファンでない人にハミルトンのフェラーリ移籍の衝撃を伝えるには、どう例えたらよいだろう?

「長嶋茂雄さんが『長年の夢だった』と語って阪神に移籍するほどの衝撃」だと私は思ったが、ほかによい例えはあるだろうか?

メルセデス入りはサインツ?アロンソ?…それともベッテル??

ハミルトン移籍により、メルセデスのシート1つが宙に浮いた。ハミルトンと入れ替わりでサインツが入る可能性は十分あるが、果たしてチームは満足するだろうか?

ラッセルは22年の移籍初年度に1勝し、ランキングでもハミルトンの前に出たが、23年は伸び悩んだ感がある。

(速さはあるがどうも線が細い、というのはルクレールにも通じるところがある)

サインツは安定感があるが、23年にチームメイトに負けてる側のドライバー2人が組むのは、いかにも魅力に乏しい(ファンの方すみません)。

メルセデスはラッセルのナンバーツーではなく、チームリーダー格が欲しいだろう。メルセデス本社のマーケティングとしてもチャンピオンクラスが望ましい。

ということで、私はアロンソが最有力と考えるが、年齢による眼の衰えだけが心配だ。

F1公式Xではラッセルの相棒の投票も

一方、チーム代表のトト・ウォルフは「ベッテルと定期的に話をしている」と語った。F1と関係ない他愛ない会話だったというが、私はこの記事を見たとき「少なくとも会話はしているんだ」と感じた。

25年はともかく、26年は最大のライバルのレッドブルがホンダと別れて戦力が落ちる。 ベッテルにレースへの未練があるなら、メルセデスは最高の復帰先となる。メルセデス本社にとっても母国人ドライバーは大歓迎だ。

ウォルフがまったくの気晴らしでベッテルと話しているとは言い切れない。復帰に向けた下心を幾分でも持っているのがチーム代表の仕事でもある。

ライコネンもアロンソもF1復帰はありえないとされていた。「ベッテル復帰はない」と誰が断言できようか。

マックスの相棒たりうる強靭さを求めるレッドブル

一方レッドブルも、ペレスがよほどの活躍を見せなければ24年をもって離脱する可能性が高い。

レッドブルはフェルスタッペンがいる以上、エースドライバー獲得の必要はない。それよりも、最強王者と組んでもへこたれない精神の強さを求めるだろう。

過去のアルボンやガスリー、昨年のペレスはフェルスタッペンと組んで精神が壊れてしまった。ペレスのように、予選で何度もミスが出てはチームの士気にも関わる。

レッドブル時代のアルボン(右)

精神が強靭なのはサインツか、アルボンか、角田裕毅か、リカルドか。それとも1周回ってやっぱりペレスか。

サインツやアルボンは26年の新生アウディや、アロンソが去ったあとのアストンマーティンのエースも狙える。いまさら、フェルスタッペンと組んで自身の評価を落とすリスクを冒すだろうか?

一方、レッドブルは25年はともかく、26年の新生レッドブル・フォードの戦闘力が未知数だ。できれば複数年契約で、開発フィードバックに長けたドライバーが欲しいだろう。

角田も十分に昇格候補だ。23年の対デ・フリース、対リカルドの成績は申し分ない。今年、入賞の常連となり表彰台に立つ活躍ががあれば、レッドブルから声がかかる可能性は高いだろう。

ただ、彼の場合は26年にアストンマーティンと組んでF1に復帰するホンダが欲しがる可能性が高い。角田はホンダを袖にしてレッドブルとの複数年契約を目指すか、アストン移籍を視野に入れるか、どちらだろう?

クリスチャン・ホーナー代表のチーム内での不適切行動の疑惑(※今後記述予定)もあり、今後の人事は見通せない。トップ3チームどころか、全10チームを巻き込みかねない荒れたストーブリーグは24年いっぱい続くだろう。

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